Г川浦さ~ん!」
事務所の窓から管理者が、卓を呼び止めた。
Г川浦さんに郵便物です」
卓は首を傾げた。
個人への郵送物が、会社に届けられるのは禁じられている。
事務所に、駆け上がり、郵便物をもらい、差出人を見ると『鈴木賢哉・川山綾子』とある。
「あっ!あの、お二人だ」
そうである。
飯田橋で、別れる、切れるのと大騒ぎした二人。
中からは、結婚披露宴招待状が出て来た。
「川浦さま、いつぞやは、大変ご迷惑を、お掛けしまして、申し訳ございませんでした」から始まった手紙には卓のお陰で、めでたくゴールインする、幸せな二人の気持ちが、切々と綴られていた。
来月初旬の大安である。
その月の末には、卓自身が挙式を控えていたが、卓は嬉しくなった。
管理者にその旨、伝えると「そういうことなら、是非参加して来なさい」との許可が下りた。
その場で、『参加』に〇を打ち、簡単なメッセージを付けた。
「お二人のお幸せを心よりお祈り申し上げます」
その後、仕事を辞めてまで鈴木の意思に添う決心をした、真摯なその心に打たれ、新郎である鈴木が譲歩し、綾子は仕事を辞めずに済んだと言うところまでは、知っていたが、ゴールインがこんなに早く訪れようとは、予想外であった。
しかし、とにかくメデタイ!卓はそう思った。
全く生活環境の違う男女が結ばれる・・・考えようによっては非常に難しい事であろう。
だからこそ、人生は楽しいのか!そうも思える。