「あら~卓ちゃんじゃないの~!」
チャイムを鳴らした卓を、家の中のモニターから見ていたのだろう。
富山の母親が驚いた様子で声を上げながら、ドアを開けた。
Гご心配お掛けしました」
Гとんでもない!で、お加減は!?」
Гこの通りです!お陰さまで、随分良くなりました!」
Гそう!?それは何よりです!ご両親も随分、心配なさったでしょう?」
Гはい」
Г立ち話もナンですから、どうぞ!どうぞ!」
促されるまま、卓はリビングへと入った。
Гもうすぐ二人とも戻りますからね」
富山と里奈のことであろう。
富山の母親は、お茶を淹れながら、卓の傍に座った。
Гお見舞いにも行けず、ごめんね」
Гいえ、温かいお心遣い、感謝しております」
卓は深々と頭を下げ、快気祝いを差し出した。
丁度その時、富山夫妻と里奈が畑から戻った。
卓を見るや皆、一様に目を丸くしたが、嬉しそうな笑顔で、卓の前に座った。
Г来るなら、メールしてくれれば、迎えに行ったのに!」
富山が屈託のない口調で言ってくれるのが、嬉しい。
Г長時間の運転ではないので、大丈夫なんだ」
卓が答えると「卓ちゃん、泊まって行くでしょ?」と富山の母が訊ねた。
Гいえ、今日は、ご挨拶だけして、帰ろうかと思ってます」
Гそうか、まだ退院したばかりだからな!」
富山の言葉に、皆が頷いた。
「里奈ちゃん!ちょっと話せるかな?」
卓の問いかけに里奈が、微笑んだ。
Гおい!俺たちがいちゃあ、マズイんじゃないか?」
富山が、覗き込んだ。
「いや、皆さん、居てください」
卓は緊張の面持ちで、立ちあがった。