里奈に連絡はしていない。
居なければ待つつもりだ。
「どうしても今日会っておきたい」
卓はそう思った。
疲れないよう、気分をラクに保ちながら運転を続ける事、45分。
今日は渋滞もなく車の流れもスムーズだ。
車内に流れるのは、卓の好きな斉藤和義の歌である。
「ずっと、好きだったんだぜ、ホント好きだったんだぜ~」
卓は一緒に口ずさむ。
「歌詞の通りだ」と思う。
親友の妹だからこそ、特別な感情を封印してきたところがあったが、こんな形で弾けようとは、夢にも思わなかった。
しかし、里奈との交際は、間違いなく嬉しいことであり、胸弾む期間であった。
もうすぐ里奈に会える。
卓は、どう切り出そうかと考えたが、良い言葉が思いつかない。
こういう時は、その場、その時間になって、その時の気持ちで、話すのが一番だ。
小細工はやめて、率直な気持ちで語ろう!卓はそう思った。
里奈の実家が見えて来た。
田畑と並行するように続く車道を走りながら、里奈の家が見えて来ると、急に胸が高鳴った。
「ヤバイ!なんだ!?このドキドキ感!ヤバイ!マジで!」
卓は深呼吸をすると、眼を見開いた。
上手く言わなくたってイイ・・・心を込めて!
卓の車は静かに里奈の実家の敷地内に、入って停まった。