その後、何事もなく時間は粛々と過ぎて行った。
卓を指名してくれる、顧客のお陰で、営業も充実している。
・・・時々、里奈から届く野菜は食べ応えがあった。
温野菜にしたり、天ぷらにしたりと、食費が浮くのも嬉しいことだが、何より卓の健康を気付ってくれる、里奈の温かさに感謝した。
その日も、茹でた蕎麦に、蓮根とゴボウ、他の根菜を天ぷらにして、昼食にした。
「サア!走るぞ!」
しっかりと、休憩をとって、夜の走行に向け気合が入る。
順調に無線も入り、自己目標も達成できそうだと思っていた矢先、前方で手を挙げる客がいた。
「オッシャ~!」
卓は滑るように、客の横に車体を付けた。
Г上宮市まで・・・」
乗り込んで来た客が、小声で告げた。
帽子を目深にかぶり、夜だというのにサングラスをかけている。
卓は一瞬Гヘンだな」と思ったが、この客を降ろせば、今日の営業は無事終わると思いアクセルを踏んだ。