そろそろ休憩である。
一旦、家に戻り遅い昼食を済ます。
「出来るだけ、自炊をするよう」母親から言われている卓は、毎日、自分で食事の準備をする。
大学時代に1年だけ、イタリアンの店で、バイトをしたことがある。
その時、覚えたのが、野菜サラダや各種スパゲッティの美味しい作り方であった。
腕には自信がある。
部屋の中も清潔さを保つため、こまめに掃除するようにしているが、一人でも不自由しないことで、卓にとって結婚問題はどんどん遠のいて行くようだ。
大学卒業後に努めた会社で、ひとつ後輩の女性社員と2年間付き合ったことがある。
しかし、縁がなく結婚に至ることはなかった。
卓は自分の覇気のなさが、彼女に「結婚したくない男」と思わせた原因であると、今でも感じている。
友人の結婚式には何十回と出てきた。
そのたび、両親からは「利子の付かない貯金が随分たまったね~」と笑われている。
しかし、結婚を急ぎたいとは思わない。
今のままでも、満足だ。
「焦っても仕方ない・・・」いつも卓はそう思ってきた。
食器を洗い乾燥機に入れる。
少しでも洗濯物が溜まるのを極度に嫌う卓は、洗濯機を回し、ベッドに横になった。
少し仮眠をとるつもりである。