卓の機転で、こと無きを得た二人が、満面の笑みで入場して来る。
集合写真と、新郎新婦の記念撮影も無事、撮り終えた。
15分のズレで入場となったが・・・
祝杯に続き、媒酌人の挨拶、二人の経歴など・・・
式次第にのっとって、進行していく。
「それでは、新郎新婦のお二人が、今日の佳き日を迎えるに当たり・・・」
司会進行が祝辞を紹介した。
「・・・川浦 卓様より、お祝辞を賜りたいと・・・」
卓は仰天した。
「聞いてない!」
そうである!
聞いていないのである。
しかし、これには訳があった。
新郎新婦のサプライズ!
仰天する卓が見たいのではなく、一番の立役者である卓に、どうしても、お祝いの言葉を贈って欲しかったのである。
事前に言うと、卓は承知しないであろうと悩んだ挙句の二人の演出であった。
卓には失礼になることを分かっていたが、それもまた楽しからずや!である。
こういう時の卓は、度胸が据わっている。
タクシ-ドライバ-を数年して来たお蔭と言えばそうであろう・・・
「ただ今、ご紹介にあずかりました・・・」
卓の祝辞が始まった。