初七日の法要まで済ますと、皆が悲しみを堪えてはいるものの、家の中には静かな穏やかさが戻った様である。
明け公の日、家に戻った卓に母親が告げた。
「おばあちゃん、亡くなる数ヶ月前にビデオを撮ったの」
「えっ!」
「皆にそれぞれ1本ずつ・・・何かあった時の為にって・・・お父さんが撮ったんだけど、卓の分もあるから・・・」
母親はそう言うとDVDを手渡した。
卓は、せかされる様にリビングのTⅤの前に座った。
画面には、ベッドに起き上がりメークまでほどこした、祖母の在りし日の姿が映る。
「ばあちゃん!」
卓は込み上げる悲しさや、懐かしさを堪えながら画面に見入っていた。
「卓!今までありがとう!」
頭を軽く下げる祖母・・・
「卓は、ホントに立派に成長したね・・・毎日、毎日、お客様のお命を預かり一生懸命な、あなたを誇りに思います・・・」
静かな口調である。
「里奈ちゃんは、良い奥さんになるね・・・いつでも、奥さんを安心させて幸せにする男が、身を立てる事が出来る・・・そう思います・・・それでね、卓!もしも、私が亡くなり、結婚を先延ばしにさせようとするなら・・・それは違うよ・・・イイね・・・結婚は予定通りにしてください・・・それが、お婆ちゃんの遺言・・・・」
卓は、声を押し殺し泣いた。
「挙式は予定通り行え」
辛かった。
来年の1周忌を終えて、考え直そうと思っていたところである。
里奈も充分、理解してくれるはずである。
しかし、予定通り、結婚しろと、画面の中の祖母が言う・・・
卓は「そんな事出来ない」そう呟いた。