「なんだか、変だぞ!やけに嬉しそうじゃあないか・・・」
朝の点呼を終え、点呼場を出ようとする卓に、田中が声を掛けた。
「エッ!?・・・そうですか・・・ナッ、ナニもないですけど・・・」
「アッ!今、噛んだよな・・・噛んだよな!」
田中は面白そうに攻め寄った。
「イッ、イヤア・・・マジっすよ・・・ナッ、ナンもないんです・・・」
「ふふ~ん・・・また噛んだ・・・ますます怪しい!」
「参ったなあ~田中主任には敵わないや・・・」
「ヤッパリネ~そうか、そうか!やっと春が来たってかあ~!」
「うっそ!なんで分かるんですか・・・」
「点呼場に入って来た時から、上機嫌だったぞ・・・すぐわかるさ!」
卓は驚いた。
管理者達は、一目で乗務員たちの健康状態や心理状態を見抜くが、田中は特別である。
寡黙だが、見抜く力が優れていた。
「主任!まだ秘密のあっこちゃんってとこです・・・」
「わかった!わかった!かわら版は回さないから安心しなよ」
その時、点呼を受けに次のグループが入り始めたのを見て、「あとで時間が合えば、昼飯でもどうだ!」と田中が小声で言った。
「はい」
卓は小さく頷き点呼場を後にした。