「卓ちゃんは、何故、ドライバーの仕事を選んだの?」
里奈から聞かれた。
久しぶりの休日デートである。
新宿の家具デパートを廻り、地下鉄で表参道に出た。
感じのいいカフェテラスでお茶をしていると、秋の穏やかな日差しに気持ちも和らぐ。
「初めはね・・・ナンでもイイやってね・・・今までの職場を辞めて、遊んでいるわけにも行かないし友人の紹介で、面接を受けたら採用が決まって・・・2種面も会社で取らせてくれてね・・・なんとなく始めた仕事だったんだけど、やってるうちに、奥の深い仕事だって思えて来たんだ・・・運送業であると同時に接客業、サービス業でもあるんだと・・・」
「接客業が向いてるのね」
「そうだと思う・・・人と接する事、基本的に好きだし、この仕事、社会の縮図って言えるんでね・・・」
「そうなんだ・・・」
「里奈ちゃんは・・・何故、野菜に興味を持ったの!?」
「私、子供のころから野菜が大好きなんです・・・OLも遣り甲斐があったんだけど、野菜ソムリエの資格をとったり、栄養学を学んでいるうち、これを職業にしたいって思うようになったの・・・食べると人は元気になるでしょ!・・・人の健康に直接かかわることって大切だなあって・・・」
「でも、その若さで、ここまで良く頑張って来られたと思う・・・」
「若いって・・・私もすぐ、30です」
「はは~僕よりは若い!それに、30までは、まだ数年あるじゃないか・・・」
「ありがとう!若いって言われると、素直に喜べる・・・」
「僕もだよ!35には見えないって言われるとね・・・」
「卓ちゃん!野菜沢山食べてください!若くいられますから!」
「うん!そのつもり!」
二人はその足で、吉祥寺の『ラ・セゾン』に出向き、オーナーに挨拶をし、当日の打ち合わせをした。
テラスからガラス張りになっている店内にも、静かな秋の光が、精一杯の輝きで、二人を優しく包んでいた。
卓は「あ~生きていて良かった!助かって良かった!」としみじみ感じている。