フレンチレストラン『ラ・セゾン』の中は、招待客で溢れかえっていた。
客席には、会社の管理者や田中主任を始め、同じ出番の仲間が、神妙な面持ちで座っている。
大学時代の友人、小・中・高の幼馴染の顔・・・沢口社長夫妻、翔太親子の顔も見える。
卓は胸が熱くなった。
「心ある、温かな人々」に囲まれていることが、何よりもうれしい。
卓はオーナーの好意で準備された着替え室で、式服に着替え、入場口で花嫁を待った。
入場口はレストランの庭である。
テラスから庭へと続いているが、入場時にはこのテラスの全面ガラスドアーを開けるのである。
暫くすると、花嫁が姿を現した。
「・・・?」
ウエディングドレスに身をまとったベールの花嫁は紛れもなく里奈であるが、卓は目を疑った。
普段の里奈はいつも野菜園や田畑に出ているので、色黒ではあるが、スリムで目鼻立ちのはっきりした健康美人である。
しかし、今日は一段と美しい。
「里奈ちゃん・・・」
卓は言葉が出なかった。
「この美しい女性が・・・カミさんになるんだ・・・」
卓の胸は躍った。
聡明で美しい妻・・・自分には「もったいない!」と、卓、自らが思った。