「卓!ありがとう!アンタの気持ちだけで胸がイッパイよ!ねえ!お父さん!」
「ああ!いいから、これはお婆ちゃんと親からの気持ちだ・・・取っておきなさい!」
「お父さん!お母さん!ありがとうございます!ばあちゃん・・・ありがとう・・・」
卓の言葉は続かなかった。
「おいおい!新婦が涙を流すのは分かるけど・・・新郎が泣くか・・・」
父親の言葉に母親が頷きながら、目じりを拭った。
美しい朝である。
太陽が降り注ぐ、晩秋とは思えない暖かな一日。
準備を整えた両親と卓が、車に乗り込んだ。
以前から予約してあった卓の会社のタクシーが、待機している。
「川浦さん!おめでとう!」
卓とは出番の違う野球部のキャプテンが、迎えに来てくれていた。
「ありがとうございます」
卓は心からお礼を述べた。
「それでは、川浦卓さんの新しい門出を祝して、スタート致します」
乗務員の声に、両親と卓は笑顔で声を揃えた。
「宜しく、お願いします!!」