賢哉と綾子の披露宴から帰りながら、卓は考える。
「あの二人、まだまだ色んな山坂を越えて行くんだろうな」
そう思いながら、これからもあの二人に関わって行く事になろうことは、何となくであるが、漠然と感じている。
一期一会で終わる営業もあれば、翔太の家や沢口社長の様に、何かしらの都合や関係で、向き合って行かねばならない人達もいる。
しかし、それを「うとましい」とは思わない。
自分もどこかで、助けられているからである。
家族であったり、知人、友人であったり、職場の上司、同僚、お得意先・・・
「人はいつも一人」ではないのである。
孤独感に苛まれる日々より、「いつも人の中にいる」と感じる方が、人生は楽しい。
確かに一人で生まれ、一人で死んでいくのが人間である。
しかし、その間の人生をどう捉えるか・・・
卓の様に始めて就職した先で、上司に恵まれず苦しんだ人も数多い事であろう・・・
そのプロセスがあればこそ、今の職場に辿りつけたのである。
ならば、この時、この職場を大切にし、自分の役割を全うしたいと卓は考える。
ここまで、成長させてくれた職場や、上司、同僚・・・全ての人たちに感謝したいと思う。
卓本人の挙式は、明日である。。