次の日、卓は明け番で、午後過ぎまで睡眠をとった。
軽く食事を済ますと、新居となるマンションへ幾つかの荷物を運び込み、既に購入しセッティングしてある幾つかの家具や家電製品を並び替えた。
里奈と交代で、新居に来ては掃除をしたり、衣類の整理をしているせいか、直ぐにでも新生活が始められるまでになり、後は冷暖房器具の設置と、窓際のカーテンを掛ければ準備万端である。
業者に連絡すると運良く、次回の明け公の日に冷暖房器の取り付けが、可能となった。
新居を後にした卓は、これからの生活を描いてみる。
自分は今まで通り、乗務員を続け、里奈は野菜ソムリエとして、羽ばたいて行くであろう。
夫婦が互いの夢と希望を抱き、歩み続ける事、尊重し合い慈しみあう事の素晴らしさを感じる。
勿論、現実は甘くない。
意見の食い違いや、感性の違いもある筈である。
だからこそ、男と女は面白い!
卓は30も半ばを過ぎた今だからこそ、この事が分かったような気がしている。
20代の自分なら、相手とぶつかり、落ち込み、結局、己の主張のみを通そうとする余り、関係は破たんしていたであろう。
卓は、この齢で結婚できる事に満足していた。
世間が分かり、人が分かって来た今を大切にしたいと思う卓であった。