久しぶりに卓は、里奈の実家へと車を走らせた。
結婚の日取りも決めなければと思う。
卓の入院・退院・通院・業務の中で、里奈の実家でも、結婚の話は控えてくれてはいるが、このままと言うわけにも行かない。
里奈の実家には、休憩をとるため、富山夫婦や里奈の両親も集まっていた。
「おう!よく来たな」
富山が相変わらず、大きな声で、にこやかに迎えてくれた。
「川浦さん!とても元気そう!」
富山の妻がお茶を出しながら、声を掛けた。
「ええ、随分、調子が戻って来ています」
「ホントにね・・・一時はどうなる事かと思ったけど・・・」
里奈の母親が微笑んだ。
「それで、今日は・・・話があるんだろ?」
里奈の父親の問いに卓は姿勢を正した。
「はい!挙式の日取りを決めたいと思いまして・・・」
「そうだな・・・一段落付いて来たみたいだし・・・」
富山は、壁に掛けてあるカレンダーを、外すとテ-ブルの真ん中に置いた。
「この秋か、来春か・・・ってとこだな」
台所で、お菓子を焼いていた里奈が、卓の傍へ座った。
「里奈の考えは・・・?」
富山が尋ねた。
「私は卓ちゃんのスケジュ-ルに合わせます」
「ありがとう・・・僕はこの秋に式を挙げたいと思っています」
「いいな!でも式場が空いてるかどうか・・・」
富山が心配げに言うと里奈が答えた
「お兄さん!私はホテルの式場でなくてもイイと思ってるの」
「ほう!と言うと・・・」
「ほら!吉祥寺のフレンチのレストラン!ウチの野菜を卸してる・・・」
「ああ!ラ・セゾンかあ」
「そう!私、あのレストランで、私が育てた野菜で、来てくださる方を、もてなしたいと、思ってたの」
「イイね!イイね!」
皆が口を揃えた。
「あそこなら、気心も知れてるし、大安で、お店が休みの日を選んで、借りればいいわけだから・・・」
富山が膝を打ちながら喜んだ。
「で、卓君の考えは・・・?」
里奈の父親が尋ねた。
「もちろん、大賛成です」
「そうか、じゃあ早い方がいいんじゃないか!」
富山は早速『ラ・セゾン』のオ-ナ-に、交渉の電話を掛けた。