その後、鈴木から連絡があったことは言うまでもない。
「川浦さん!ありがとうございました!」
「いえ、私が自ら、付いて来たわけではなく、川山様のたってのお願いということでしたので、ここまで口を挟みました・・・不快に思われたでしょう・・・」
「不快だなんて、とんでもない・・・川浦さんに入って頂いたことで、数年間の問題点が、こんなにも早く解決した訳で・・・私は、こういう問題にはうといんです・・・昔から・・・」
「コンピュ-タ-関係のお仕事をしていらっしゃるとか・・・」
「はい・・・プログラマ-から始まり、今は開発事業部にいます」
「大変ですね」
「イヤイヤ、コンピュ-タ-相手の仕事で・・・人間関係と言いますか、特に女性心理は、苦手でして・・・」
「男は誰もがそうだと思います・・・川山様はパワ-のある方です・・・しかし、認める事は、しっかり認める方ですので、今回の事は必ず、ステップアップにつながると思います」
「ありがとうございます・・・それと、彼女の歩み寄りの姿勢が確認できたので、今しばらく、彼女が仕事を辞めずに済むよう、私自身も心を開きます」
「そうですか!川山様は、喜ばれると思います」
「ホントにありがとうございました」
「いえ、とんでもございません・・・お電話ありがとうございました」
「あっ!川浦さん!」
「はい」
「これからも、宜しくご交誼願います」
「いえ、こちらこそ!」
「厚かましいお願いですが、これを機に友人付き合い出来れば、有難いのですが・・・」
「承知致しました!私で宜しければいつでも、ご連絡ください」
今回の事は、営業が掛かっていたとはいえ、卓に、若干疲労が残ったことは事実である。
「何故、自分はこうやっていろんな事に巻き込まれるのだろう」
自問自答してみるが、答えが出ない。
しかし以前、田中から言われた事がある。
「人徳だよ!人徳!人徳のなせるワザ!」
「いやっ、それは人徳って、言わないでしょ」
「それは違う!備わっている徳で、人を助けているんだよ・・・キミは・・・」
「人助け・・・ですか」
「感謝してもらっていると思うよ!そういう人はいるよ・・・人間的な器が他とは違うという事が、分かるんだよ・・・他人だからこそ・・・」
「自分では分かりませんが・・・」
「当然だよ・・・私、人徳!備わってます!っていう人はいないよ!」
「そうなんですが・・・」
卓は「人がイイって思われてるかもな・・・」と考える。
しかし、実際は田中の言葉があたっている。
卓には本来、人を魅了してやまない素質のようなものがあった。