家に戻った卓は、風呂を沸かすと熱めのお湯に身を浸した。
何故か食欲は湧かない。
やはりまだ、衝撃と疲労と興奮が残っているのだと感じた。
いつものように牛乳を温め、ブランデーを一、二滴垂らす。
先日、里奈から送って来たヒーリング系のCDが、目に付いた。
・・・流れて来る音楽を聴きながら、徐々にウトウトし始める。
卓は、そのままベッドに倒れ込むと、身体が深い地の底に引きずり込まれるような、感覚に襲われた。
・・・目覚めたのは夜も8時を回った頃・・・
先程の事件が、嘘のように感じられる。
「あれは・・・夢!?・・・イヤ、自分が体験した現実だ・・・」
卓は、疲れがまだ取れていないと感じた。
「今日はこのまま、静かに過ごそう・・・」
やっと空腹感を感じ、冷蔵庫を開けると、作り置きのポテトサラダと納豆、母親が送って来てくれた讃岐うどんがある。
「とにかく、何か、食べないと・・・」
サッと、うどんを茹で、少なめのご飯を、何品かの、おかずと食べ始めた。
身体が、少しずつラクになるのを感じた卓は、食べ終わると食器を持ち、立ちあがった。
瞬間、天井が回り始め、床がうねり始めた。
「ナッ!ナンダ!ナンなんだ!」
地震かと思ったが、様子が違う。
持っていた茶碗が、音を立て、手から滑り落ちた・・・
身体がガクッと前につんのめり、卓はその場に膝をつき倒れた。