人の目もある。
無理に少年の荷物を持とうとしない方が、良いと思った。
「そこが、交番だよ」
卓が指差す前方に交番があった。
少年はやっと安心したようである。
交番の中には若い巡査2人と婦人警官が一人いた。
「あの~、タクシープールの近くで、子供が泣いていたものですから・・・」
そう告げるや否や「あ!翔太くん?」
若い警官が声をあげた。
「そう・・・」
翔太と呼ばれた少年は頷いた。
「お母さんもキミの事、探してるよ・・・待ち合わせの場所、どちらかが間違えたんだよ」
少年は涙で真っ赤にはれた目を見開いた。
「あのね、お母さんは改札口の柱の前って、おっしゃったそうだよ」
警官の言葉に少年は「違うよ!エレベーターの下って言ったよ」
少年はまた、泣きそうになった。
「分かった、分かった・・・とにかく、ここで待ってて・・・今、お母さんに連絡するからね」
若い警官が受話器を持った瞬間、交番のドアーが開いた。
「翔太!」少年の母親だった。